[T.O.M] 第1章 Otogi.1
「息苦しい。」
気が付けば階段に座り、ギターを弾いていた。
涙で濡れたギターは切なく儚い音色を響かせる。
旅立ちの時、贈る歌。
それは宇宙の様で河原。
Otogi1
おとぎの国。そこには何があるのだろうか。
(幸せ)かな。
トムが運んでくる空気はとても温かくて心地良い。
いつも寝る時は僕の足を枕にして寝ていたから、僕は一度寝る体勢になったらもう身動きが取れなかった。足を動かしたら怒られるんだ。
冬はあったかくて良いけど、夏は地獄だったね。お互いに。
でも今は足にのしかかる重さ、温かさ、安心感すら消えてしまった。
「トム、お前は今Otogiに居るのか?」
「いつ帰ってくる?」
「そっちの世界も楽しそうだな。」
「幸せそうだな。」
錆びれたブラウン管テレビに映し出されたのはアナログの僕。
情けない顔をしていた。
いつからかトムの存在は、弟から兄へと変わっていった。
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