酒酔いの世界。
「あのー、この電車ってここの駅に停まります
か??」
と私は駅員室を覗き込みながら訪ねた。
駅員室はタバコの臭いが充満していた。
窓口には誰もいない。
「すみませーん。」
:どうしました??
奥の方から帽子を浅ーく被り、右手にスマホ左手にブラウニーを持った駅員が出てきた。
駅員は窓口の近くまで来て床に体育座りをした。
むしゃむしゃブラウニーを食べながら、スマホをいじりだした。
「あのー…。」
(なんやこいつ)
:はぁ、なんでしょう?
ブラウニーのカスを口に付けたままこちらを見上げた。
「あ、えーっとこの電車って新神元駅に停まり
ますか??」
ブラウニーにを食べ終わった駅員は気怠そうに立ち上がり、スマホをいじりながら答えた。
駅員:あー、多分ねー、停まりますよ。
「え、、?」
駅員:うん、多分、いやー、どうだろ?いや、多分そうだ。
「どっちですか?」
駅員:んー、、多分です。ていうかお客さん酒入ってます?
駅員:お客さん、ここ何処だか知ってますか?
「雲神駅でしょ?」
駅員:あー、なるほど。やっぱりそうだ。
お客さん、ここは偽物の世界なんですよ。
お客さんはここが雲神駅って思ってても
ここは僕の家なんです。
だから僕はこうしてブラウニーを食べてる
んです。
「え?何言ってるの?」
駅員:お客さん、あまり目の前の事信じすぎない
方がいいですよ。
今見てる世界が貴方の生きている世界かど
うか分からないのです。
目を閉じたら光は無くなりますよね?
目を開けたら光は見えますね?
でもそれは違うのです。
目を閉じたら光が見え、目を開けたら光
は消えるのです。
だからね、新神元駅なぞありませんよ。
新異世界へようこそ。
ブラウニー、美味しいですよ。